まず数字から入りましょう。2024年後半、カリフォルニア州インナーエンパイアにある美容系ECの倉庫は、月におよそ120,000オーダーを出荷していました。オーナーからこう聞かれました。「うちの倉庫の人件費って、1オーダーあたりいくらなんだ?」財務部門の答えは$2.10。私は3か月分の給与台帳と労務記録を洗い直し、$3.40という数字を持ち帰りました。60%高い。財務の計算ミスではありません。そもそも測っているものが違ったのです。
彼らの分子は、現場スタッフの基本給だけでした。分母はシステム上の「出荷記録」でした。抜け落ちていたのは、ピーク月の賃金総額の30%を超えた残業代、40人以上の派遣スタッフを「業務委託費」として計上し人件費勘定に一度も触れなかった分、そして返品処理・棚卸カウント・誤ピックの手直しに費やしたすべての時間が「間接費」の中に埋もれていた分です。倉庫のオーダーあたり人件費という数字は、分子と分母に何を入れるか少し変えるだけで結果が倍になる類のものです。だから最初に耳の痛いことを言っておきます。分子と分母を見せないでオーダーあたり人件費の数字を出す人は、何かを売りつけようとしています。
信頼できるオーダーあたり人件費のベンチマークが存在しない理由
さっと検索してみると、奇妙なことに気づきます。オーダーあたり人件費のベンチマークを語る記事はたくさんあり、いくつかは具体的な数字まで出しているのに、どれも根拠がありません。WMSベンダー自身のホワイトペーパーですら、信頼できる公開の数字は存在しないと認めています。隠しているからではなく、その数字を標準化できないからです。
理由は分母にあります。「1オーダー」が倉庫ごとにまったく違うものを意味するからです。スマホケースの倉庫は1オーダーあたり平均1点。ピッカーは1時間に100オーダーを超えて処理できます。自動車部品の倉庫は1オーダーあたり平均4〜5ライン。ピッカーはカートを押して倉庫の半分を歩き、1時間に十数オーダーを処理します。スマホケース倉庫のオーダーあたり人件費を自動車部品の現場に当てはめたら、桁がひとつ違います。しかもこれはSKU数、ロケーション配置、自動化レベル、返品率を考える前の話で、それぞれが単独で結果を2x動かしかねません。
だから最初に直感に反する結論を置いておきます。ベンチマーク探しはやめてください。存在しないのですから。他人のオーダーあたり人件費を自分の倉庫に当てはめることほど、コスト管理で危険な罠はありません。 自分の数字を出し、比べるのは自分の過去だけにしてください。
倉庫のオーダーあたり人件費の計算式:分子も分母も開く
計算式自体は1行です。
倉庫のオーダーあたり人件費 = 月の人件費総額 ÷ その月の出荷オーダー数
肝心なのは、両方の中身を定義することです。私のフルスコープの分子はこうなります。
| コスト項目 | 含まれるもの | たいてい隠れている場所 |
|---|---|---|
| 直接賃金 | ピッカー、パッカー、チェッカー、ストッカー、レシーバー:実際の給与 | 試用期間中のスタッフ、夜勤手当 |
| 付帯人件費 | 雇用主負担の給与税、労災保険、健康保険 | 実際の料率を使ってください。米国では一般に賃金の十数パーセント台で、州によって大きく異なります |
| 残業 | 1.5x以上の割増賃金 | ピーク月には賃金総額の30%を超えることもあります |
| 派遣・請負人件費 | 人材紹介会社の手数料、季節スタッフ | 「業務委託費」として計上され、人件費勘定に一度も入らないことが多い |
| 間接人件費の配賦 | リーダー、スケジューリング、QC、棚卸カウント、手直し対応 | 手直しと待機時間は「間接費」の中で一番見失いやすい |
分母も同じ丁寧さで扱ってください。使うのは実際に出荷したオーダー数です。受注数でも出荷記録でもありません。1オーダーが2個口で出る場合は、1オーダーと数えるのか2オーダーと数えるのか最初に決め、1年間その定義を凍結してください。もうひとつおすすめです。マルチラインオーダーの比率が高い倉庫なら、ピックラインあたりのコストも出してください。その数字のほうが、オーダーあたりコストより真の効率を映します。
賃金の仮定を裏取りする無料の外部参照がひとつあります。米国労働統計局(US Bureau of Labor Statistics)の職業雇用・賃金統計(OEWS)です。SOC 53-7062「Stockers and Order Fillers」が、倉庫のピッキング・ストッキング職種の公式分類になっています。予算を組むときはBLSのサイトで最新の公表数字を確認してください。求人広告の提示賃金は絶対に使わないでください。あれは人を集めるための提示額であって、人を留めるためのコストではありません。
実際の帳簿を開く:$3.40はどこから来たのか
あの美容倉庫の話に戻りましょう。2024年10月から12月の帳簿を切り直しました。
| コスト項目 | 月平均(USD) |
|---|---|
| 現場の直接賃金 | 210,000 |
| 付帯人件費(実料率) | 63,000 |
| 残業 | 72,000 |
| 派遣人件費 | 41,000 |
| 間接配賦(リーダー/QC/手直し) | 22,000 |
| 月の人件費総額 | 408,000 |
| 月の出荷オーダー数 | 120,000 |
| 倉庫のオーダーあたり人件費 | $3.40 |
財務の$2.10は、分子に最初の行だけを使い、分母には分割出荷の「出荷記録」が15,000件余計に入っていました。$3.40に対するオーナーの最初の反応は「ドブに捨てるような金だ」でした。私の答えは、無駄かどうかは構造次第だ、というものです。表を見てください。$72,000の残業が突出した異常値で、通常月は$20,000前後です。この四半期に増えた$150,000の残業は、9月のスケジューリング失敗ひとつに帰着します。ピーク前に派遣を雇わなかったため、既存の人員がずっと1.5xで働き続けたのです。そのお金は効率に使われたのではありません。まずい計画に使われたのです。
もうひとつの事例。2025年初めのニュージャージーの3PLです。クライアントが、3PLのピック&パック$1.80/オーダーの見積もりは高いのかと聞いてきました。分解してみると、$1.80はピッキングとパッキングの直接人件費だけをカバーしていました。返品処理、棚卸カウント、例外対応は入っていません。3PLが請求するすべての料金に按分すると、真のオールインの数字は$2.60/オーダーでした。高いか?自分たちでやる場合の$3.10と比べれば、いいえ。近所の倉庫の$2.20と比べれば、はい。いつものルールです。意味のある比較は自分との比較だけです。
実際に効く4つのコスト削減レバー
構造を開けば、節約のポイントは自分から指をさします。効く速さの順に4つのレバーです。
1つ目:残業率。 ほとんどの倉庫がここで出血しています。計算は単純です。直近12か月を取り、残業代の合計を直接賃金の合計で割ってください。その比率が通年で20%を超えるなら、固定の人員が少なすぎます。残業は1.5xで払い、派遣は通常単価なので、損益分岐は簡単に見つかります。6週間を超えるピークは、残業で回すより派遣を入れたほうが安いのです。あの美容倉庫は2025年のピークの8週間前に派遣を50人雇い、残業は月$72,000から$29,000に下がりました。
2つ目:工程ごとにUPHを測る。 UPH、つまり1時間あたりの処理数(ユニット、またはオーダー)は、私がベンチマークを出さない数字です。ベンチマークは誤解を招くだけだからです。でも自分の数字は測らなければなりません。ピッキング、ストッキング、パッキング、検品を、WMSのタスクログから工程ごとに計測します。4つの中で一番遅いのがボトルネックです。私が関わった倉庫の10件中8件では、ボトルネックはピッキングではありません。パックステーションです。一人が箱を封緘し、ラベルを貼り、計量する間、ピッカーたちが待っているのです。

3つ目:手直し率。 誤ピックのコストは「もう1回出荷する」では済みません。カスタマーサービス対応の時間、返品送料、もう1回分のピック&パック、そして在庫記録の混乱がかかります。たいてい通常オーダーの人件費の3〜5倍です。誤ピック率を1%から0.3%に下げるほうが、どんなピック経路の最適化よりもお金を節約します。まず自分の手直し倍率を出し、それから検品ステーションにもう1人入れる価値があるか判断してください。
4つ目:閑散期の遊休時間。 ピークに人手不足、閑散期に人余りの倉庫は多く、閑散期の重しが年平均を押し上げます。対策は2つ。暇な月は、余った時間を棚卸カウント、ロケーション最適化、設備メンテナンスに振り向ける。そうでなければ永遠に手がつかない仕事です。もうひとつは、人員の10–15%を柔軟枠(パートタイムや派遣)として持ち、ピークに増やし閑散期に減らすことです。
締め:4マスのワークシート。埋めれば、それがあなたの答えです
私の数字は忘れて、方法だけ残してください。紙を1枚取って、4つの数字を埋めてください。
- 先月の人件費総額(上の表のフルスコープの分子):$____
- 先月実際に出荷したオーダー数:____オーダー
- うち残業代:$____
- 総時間に占める手直し・返品対応時間の割合:____%
1のマス ÷ 2のマスが、あなたの倉庫のオーダーあたり人件費です。次に3のマスを見てください。残業が直接賃金の20%を超えていたら、まずスケジューリングを直してください。4のマスを見てください。手直し時間が5%を超えていたら、まず精度を直してください。この2つが下がるまでは、自動化や新しいWMSの話は順番が逆です。
そして最初に言った耳の痛いことをもう一度繰り返します。分子と分母を見せずにオーダーあたり人件費を言う人は、何かを売りつけようとしています。この記事も例外ではありません。私の$3.40はあの倉庫の数字であって、あなたのものではありません。あなたの答えは、あなたの帳簿の中にあります。
Lao Zhou(物流コストアナリスト)著
英語版からの翻訳。内容に相違がある場合は英語版を優先します。







