2022年秋。私はカリフォルニア州オンタリオ郊外の3PL倉庫で業務レビューをしていた。オーナーはテーブルの向こうからExcelのシートを滑らせてきた。全社の在庫回転率は8.2。彼の頭の中では、それは「うちは締まった運営をしている」という意味だった。そこでその場で決断した——繁忙期を前に安全在庫を3割削減。回転率がこれだけ高ければ、欠品はリスクにならないと考えたのだ。
翌春、彼の最大顧客2社で売れ筋商品が枯渇した。回復のための緊急航空輸送費は6桁を大きく超えた。彼のスプレッドシートを分解してみると、8.2という数字は分子から分母まで間違っていた。本当の数字は4をわずかに上回る程度だった。在庫がよく管理されていたのではない。計算が間違っていたのだ。
それ以来、私は反射神経のように身につけた癖がある。クライアントが在庫回転率の話を始めたら、最初の質問は必ず同じだ。「その数字は正確にどう計算しましたか?」10回中7回は、計算式そのものが成り立っていない。
売上高か売上原価か——分子に置くのはどっち?
これが最もよくある罠だ。計算式そのものは正しい。在庫回転率とは、ある期間の売上原価を、同じ期間の平均在庫で割ったものだ。分子も分母も原価ベースである。分子に売上高を置いた瞬間、「利益を含むお金」を「利益を含まない商品」で割ることになる。比率は必ず水増しされる。
一緒に計算してみよう。小規模な倉庫が年間8,000,000ドルを出荷し、粗利率25%、平均在庫1,200,000ドルを抱えている。売上高ベースでは 8 ÷ 1.2 = 6.7回転。売上原価ベースでは 6 ÷ 1.2 = 5回転。同じ倉庫、2つの計算式、34%の開き。粗利率が高いほど、嘘は大きく膨らむ。
もっと微妙なのはベンチマーク比較だ。A社は粗利率40%、B社は15%。分子に売上高を置いて両社の回転率を比べれば、違う物差しで測っていることになる。公平に比べたいなら原価ベースで統一すること。相手側から原価ベースの数字が取れないなら、自分をだますより比較を諦めた方がいい。
もう一つ、見落とされがちなポイント。返品は分子から差し引いているか?差し引くべきだ。返品された商品は実際には売れていない。フローに残したままにすれば出荷量が水増しされる。多くの倉庫は返品を別ラインで記録しておきながら、後で差し戻すのを忘れる。それで分子は1年間で5〜8%も静かに膨らむ。
平均在庫か、それとも今日棚にある在庫か?
2つ目の罠は分母にある。私が見てきたスプレッドシートの多くで、分母は単に期末在庫残高だ——棚卸し直後につかみやすい数字だからだ。でも期末在庫はスナップショットであり、季節性のあるビジネスではスナップショットは嘘をつく。
アウトドア用品の倉庫を考えてみよう。9月にはホリデー商戦に向けて在庫を積み増す。手元在庫1,800,000ドルに対し、1月は600,000ドルだった。期末の数字で割れば回転率は崩壊する。オーナーは「回転率がひどい」と見て発注を絞る。期首と期末の平均に直せば、数字はまた健全に見える。逆も起きる——1月に大規模クリアランスをやって年末にほぼ空になった倉庫は、同じ手抜き計算で見栄えのいい回転率を得る。
私のルールは単純だ。データが許すなら、2つの端点の平均で済ますな。12か月の月末残高の平均を取れ。最低でも四半期でやれ。季節性のあるカテゴリー——玩具、アウトドア、アパレル——では、四半期の数字が、年間数字では平らにならされてしまう問題を拾ってくれる。WMSなら月末残高はほぼ確実にエクスポートできる。ExcelのAVERAGE関数一つだ。手を抜くな。
それから輸送中の在庫。すでに代金を払ったのに、まだコンテナ船の上にある商品——カウントするのか?貸借対照表には載っているが、ラックにはない。売れないし、ピッキングもできない。私は業務目的で回転率を計算するとき、輸送中在庫は分母から外す。資金繰りには影響するが、倉庫の効率には関係ない。両方の見方は持っていていい。混ぜるな、それだけだ。

分母の死に在庫が数字全体を毒する
3つ目の罠は最もたちが悪い。深く隠れているからだ。多くの倉庫は「ゾンビSKU」を抱えている——12か月以上動きのない商品だ。分母に居座り、じっと動かず、比率全体を引きずり下げる。オーナーは弱い数字を眺め、「在庫過多だ」と結論し、売れ筋商品の補充を絞る。本当の病気——死に在庫——には決して手をつけない。
年2回転そこそこで足踏みし、オーナーが在庫の膨張を常に嘆いていた金物卸と仕事をしたことがある。分解してみると話は変わった。死に在庫は在庫金額の3割を超えていた。それを除けば、健全なSKUは5回転以上していた。問題は「回転が遅い」ではなかった。「誰も枯れ木を片付けなかった」だったのだ。
だから私はいつも2つの数字を出す。全部込みの回転率は資本効率の全体像を示す。12か月無動SKUを除いた回転率は、日々の現場が実際にどう回っているかを示す。両者の開きが広いほど、死に在庫の足かせは重い——そして処分は優先順位の上位に置くべきだ。死に在庫の基準は自分で決めていい(私は通常12か月無動をラインにする)。決めたら全社で一貫させること。今四半期は12か月、来四半期は18か月、という使い分けはしない。
私が実際に使う計算式とチェックリスト
3つの罠を埋めると、正しい計算式はこうなる。
在庫回転率 =(売上原価 − 返品原価)÷ 月平均在庫(輸送中在庫を除く)
そして、使えるチェックリストをどうぞ。回転率レポートを出す前に毎回、これを回すこと。
- 分子は売上原価であり、売上高ではない。返品は差し戻し済み。
- 分母は同じ期間の平均在庫——季節性ビジネスでは最低でも四半期平均。期末スナップショットは参考にすぎない。
- 輸送中在庫は分母から外し、別枠で管理する。
- 死に在庫は専用の見方を持ち、稼働SKUと混ぜない。
- 期間比較では会計方法(FIFOか加重平均か)を一貫させる。他社比較では、相手も原価ベースであることを確認する。
覚えておく価値のある換算が一つある。365 ÷ 回転率 = 在庫日数。営業チームに「このカテゴリーは平均73日在庫が滞留する」と言う方が、「回転率は5です」と言うよりずっと響く。
そして最後に、誰も逃れられないトレードオフ。回転率が低すぎれば、キャッシュは在庫に溺れる。高すぎれば、欠品と緊急費用に食われる。普遍的な「健全な」数字など存在しない——消費財と産業用スペアパーツは別の宇宙に生きている。だから他人のベンチマークに悩むな。まず自分の計算を正しくすること。間違った数字の最適化は、間違いを加速させるだけだ。
明日からできること。今の回転率レポートを開き、上の5項目と一つひとつ照合してみること。分子に売上高が見つかったら、過去を書き換える必要はない。今月から両バージョンを並行で回し始めるだけでいい。3か月後、2つの曲線の開きを見てみよう。その開きこそ、水増しされた数字があなたから隠してきた真実だ。
英語版からの翻訳。内容に相違がある場合は英語版を優先します。






